事故物件
息子が亡くなっていると夫から連絡を受け、みんなでアパートに駆けつけた。
すでに警察車両が何台もいて、警察官の方も何人もおられた。調査が終わるまですぐに部屋には入れてもらえず、駐車場の車の中で長い間待機していた。
その間アパートの人や近所の家の方が何人か通り過ぎていかれた。中には気の毒そうな顔をしてこちらを見ていく方もいた。
息子の葬儀が終わって一ヶ月くらいしてから、大家さんとお話し合いをした。話し合いの結果、大家さんに賠償金をお支払いすることになった。
その時、あーそっかーうちはこのアパートのこの部屋を事故物件にしちゃったんだとやっと気がついた。それまでそんなこと思う余裕がなかった。
そりゃそうだよね、そんな部屋誰も住みたくないよね。
大家さんにも、アパートの人たちにも申し訳ないことをしてしまった。
あの部屋は今どうなっているのだろう。
誰か住んでくれているのかしら。
見に行く勇気はないけれど。
ごめんなさいと心の中で手を合わす。